※こちらは円舞曲様よりキリバンゲットで頂いた、
『Opal』ノアノア少年パロディ版(白雪姫編)です。ありがとうございました!

パロディですので、円舞曲様サイト『AVALON』より、先に本編を読んで頂くようお願いします。素敵な小説を沢山連載中ですよ〜。

お読み頂けた方はレッツスクロール。











 むかしむかし、酒乱城という所に白雪のような
 それはそれは美しい美しい王子様がおりました


〜酒乱城は今日も賑やか?!〜
ノアノア少年パロディ版(白雪姫編) written by 円舞曲様




ハイホー ハイホー 酒乱城に続く深い森の中
ハイホー ハイホー 七人に満たない小人が住む
ハイホー ハイホー 火の魔物も吃驚するほど面白い顆粒
ハイホー ハイホー 七人に満たない小人たちの森ガイドも絶品
ハイホー ハイホー たまには白雪ことノアノア王子に出会えるかもよ♪





 継母王妃ときたら、まったく碌なことを考えないと酒乱城の白雪こと十四歳のノアノア王子はつくづく思う。自身の写真集に嫌な予感を憶えたノアノア王子は狩人ではなく、顆粒人――この森には動物はいなく、変わりに七色に輝くオパール顆粒に満ちていた。なので狩人ならぬ顆粒人である――のドラムに頼み込んでお城を逃走してきたのである。

 ノアノアは前王の王子で現王の甥にあたる。前王の今わの際の頼みで現王がノアノア王子を自身の子と迎えた。それから二年ほどして、今の継母ミランダを王妃に迎えた。おかげでノアノア王子は継父王と継母王妃と酒乱城で暮らす羽目となったのである。
 しかも、ほどほどに財政を凌いできた酒乱城はミランダ王妃の類稀な大食に悲鳴を上げて、城の賄が急激に傾き始めたのであるからたまったものではない。売れるもは売り、泣く泣く召使達にも暇をやり、止む無く王様は出稼ぎの身となって、他国で稼いではせっせと仕送りをして、なんとか酒乱城の対面を図ったのである。

 それにしても『王子の姿は目立ちますから』というドラムの提案で着替えたこれには多いに疑問が残ると、自身の姿を見下ろしながら思うノアノア王子だ。
 ふりふりフリルのついた真っ白なブラウス。赤い、これまたふりふりフリルのスカートと刺繍の凝ったベストとブーツ。極めつけは頭の赤いレースのスカーフ。も、もうちょっと……。違った服装があるのではないだろうか。そう三日月の見目麗しい眉をしかめて悩むノアノア王子である。
 どうしてもこれに着替えないと駄目なの?と再度ドラムに尋ねると『下々の者はこうやって楽しむ……。いえ!こうやって別人に成りすまして身を隠すものなのですよ』と真剣真面目な顔で言うので世間に疎いノアノア王子は疑問を持ちつつ言われたように着替えたのある。
 そのうえ着てみると、足元がスースーしていてなんとも落ちつかない。そこでこっそり白いタイツを赤いスカートの下に履いてみる。やっぱり、生足は性に合わないらしいと悟る。
 そういえば、酒乱城は偉大だったご先祖のおかげで天然大理石の床ですこぶる底冷えする。あのお洒落な継母王妃も洋服の下はばばシャツ+股引だったと思い出す。
 着替えおわると顆粒人のドラムは『幸運を!』と言って、顆粒を追って行ってしまった。さすがに顆粒人である呼びかける間もなく、顆粒と共に見えなくなった。ノアノアは酒乱城に続く深い森の中で一人になった。
 で、ここはどこなのでしょう???






 酒乱城では継母のミランダ王妃がノアノア王子に着せる衣装のカタログを真剣な眼差しで見ていた。きっと、この写真集が売れれば、王様も戻っていらっしゃる。そう思うと知しらぬまに顔が幸福いっぱい嬉しそうに弛むのである。不気味な笑いが酒乱城に響き渡った。

 先日、出版ギルドに耳打ちされ、傾いた城の経営の立て直しのために試に王族写真集を販売したところ、これが大当たり。月々に溜まっていた赤字を解消してお釣りがきた。そのため、いける♪ と踏んだミランダ王妃は早速、新写真集の計画を進めたのである。
 ところが、気に入らない点が一つ持ちあがった。今度の主役はノアノア王子の特集でと出版ギルドの希望なのである。
「どうしてあたし、ミランダ王妃の特集じゃないんでしょう。解せないわ」
 ミランダ王妃はとっても固焼きクッキーと格闘しながら考える。この固焼きクッキーはダイエット用に開発された物だが、王妃はあっという間に噛み砕いてしまう。それでも、普通のクッキーよりは時間が稼げる分だけ、お城の財政も助かっている。
「まぁ、いいわ。王様さえ戻っていらっしゃれば、そんな些細な点など問題なくってよ」
 負けを認めたくない王妃は対したことはない、と見栄を張る。胸中は白雪のように美しいと人々が称賛するノアノア王子の美貌への激しい嫉妬が渦を巻いているというのに。
 不気味な、今度は甲高いが酒乱城に響き渡った。





 お腹が空いた……

 鍵をかけて継母王妃が食糧庫管理をしてるので食糧はなにも持ち出せなかったノアノア王子である。

 この顆粒の森の中に食べられる物ってあるのだろうか?
 ドラムってば、せめて、街中で置いてきぼりにしてくれればよかったのに……

 そう思いながら力無くとぼとぼ歩いているといい匂いが漂ってきた。

 ああ、これはクリームシチューの匂いだ……

 誘われるようにその匂いの元へと歩き出すノアノア王子である。
 しばらく行くとちょっと屋根の高さが低い小さ目の家が目の前に現れた。一応、ドアをノックする。
 が、誰も、何も応答がない。仕方なく扉を開けてみると開く!ではないか。
「こんにちは!お邪魔しますぅ〜」
 下々の挨拶だと習った言葉を言いながら、そろりそろりとノアノア王子は中に入る。室内の高さに合わせて身を少し縮めて。そうしないと、天井に頭がぶつかりそうなのである。
 見回した室内には誰もいなかった。そして、やっぱり……あった!シチュー鍋が暖炉の側に!!
 ノアノア王子は嬉しくなり、身を縮めた姿勢で駆けよって、思わず蓋を取ってしまった。その美味しそうな匂いが空腹の自身に染み渡る。あとは理性より、食欲が勝った。片手は近くに置かれたお玉に延びて……

 満ち足りて気がついた時にはすべては遅かった。鍋のシチューは綺麗に空になっていた。
「どうしよう……。ちょっと、頂くつもりだったのに……」
 お腹に収めてしまったものはもう、元には戻らない。鍋は空っぽ。
 さぁ、大変だー! 大変だー! 大変だー!
 ノアノアは鍋を持って身を縮めた状態で室内を歩き回る。
 これじゃ、あの継母王妃と同じじゃないか。考えも自制もないままに食欲の赴くままに食べ尽くしてしまう、ミランダ王妃に。自己嫌悪におちいるノアノアである。





「これで完璧ね。さて、次はノアノア王子のお肌のお手入れね。いくら白雪のようだと言われていても、ここのところ顆粒人にそそのかされて外でばかり遊んでいるのだから、お肌の極めに問題があるかもしれないわ」
 ミランダ王妃はノアノア王子の部屋へと自ら赴く。料理人以外、酒乱城には使用人はいない。料理以外は王妃といえど、自分でしないといけないのである。最も片付け上手のケイン王が出稼ぎに行ってからは掃除が不得手の王妃のために月二でメイドサービスが来る。なぜならば、掃除をやるだけ、やるほどに散らかるという特技がミランダ王妃にはあるからである。
「ノアノア王子入るわよ」 
 と言うのと扉が開いて王妃が入るのは同時だった。だが、それを咎めるものも眉を潜めるものはもはやこの酒乱城にはいなかった。
「あら? いないわね。あれほど、お部屋にいなさいと言いおいておいたのに。悪い子だわね……。王様さえいらっしゃれば、こんな勝手な真似は出来ないでしょうに……」
 ミランダ王妃はノアノア王子の容貌を妬んでいるから、怒りの言葉も凄まじい。ひとしきり気がすむまで怒りの言葉を喚くまで気がすまない。
 それが納まると、王子の部屋を出て、今度は自身の衣装部屋へと向かった。そこには例の問題のゴシックではなくゴシップ鏡がある。何よりもゴシップが好き!という癖のある魔法の鏡が。

「鏡よ、鏡、ギルをここへ――」
 鏡の中から、火の魔物が一匹じゃくて、一人現れる。紫の流れるようなドレープ仕様の衣服に身を包んだ美青年なのだからそう言わねばならない。
「オレ様を呼んだか」
「ギル、ノアノア王子はどこ?」
「オレ様は知らない」
 ミランダ王妃は華奢な指にある似合わない魔物の指輪をちらつかせる。ギルはこの指輪が王妃の手元にあるかぎりは逆らえない。
「捜せと言ってるのよ。少しは頭を使いなさい!」
 ギルは火の魔物国の王子である。人間とは思考回路は違うのであるが王妃はそんなことは考えない。
 もっとも、よーっく考えてくださいよ!と言われてるのは王妃も同じ身であるのだが。
「七人に満たない小人の家にいる」
「どこよ、そこ!?」
「森の奥だ」
「どうしてそんな場所にいるのよ!!」
「知らん」
「鏡よ、鏡、ノアノアをここへ――」
“それは無理です。ノアノアは酒乱城に続く深い森の中におりますから”
「どうして?」
“結界がかかってます。お忘れですか? 城の周囲には、城に邪悪な魔法が入り込まない様に王様がお出かけの時にかけられて行きました”
「ああ、そうだったわ。じゃ、どうすれば……」
“城の敷地を出れば魔法は可能です”
「オレ様に用事がないんだったら、オレ様は戻るぞ」
 しかし、王妃はすでに自身の考えに没頭して何も耳に入らない。ギルは来た時と同じようにあっという間に消えた。




     ++++++本日の酒乱城内情報+++++

 貴方の目の前にノアノア王子が現れるかも?!
   この度、ノアノア王子はとうとう家出をしました。
   手伝ったのは顆粒人の何某という噂だが
   駆け落ち説も含めて真偽の程はわからない模様。
   なお、ノアノア王子は変装しているとのこと。
   その見つけ方は可愛らしい+赤色!
   チャンスです!貴方もカメラ片手に
   ノアノア王子を見つけてみては如何でしょうか?
   貴方オリジナルのノアノア王子のアルバムが出来ますよ。

 また、ギルと名乗る男が酒乱城に現れる!!
   紫の流れるようなドレープ仕様の衣服に身を包んだ美青年が
   何処からともなく酒乱城に現れ、そして、忽然と消えた。
   これが噂のミランダ王妃のお相手か?!
   不倫疑惑はますます混迷の度合いである。
   もしかしたら、ノアノア王子の家出もこれに関連が?

             〜ゴシップ鏡〜 




 王妃は宝物庫にきていた。大切なものは入ってないので鍵はかけていないので簡単に開く。
「っうぅ! ほ、誇りじゃなくて、埃っぽい……」
 ここは別名、物置と呼ばれている、リサイクルショップにも引き取ってもらえないガラクタばかりが放りこまれた場所である。粗方がノアノア王子の父である前王が集めた魔法の通販グッズが支流である。
「この中にノアノア王子を連れ戻すものが、きっとあるはずだわ」
 変な確信を持って、王妃はガラクタの山を前に怯まずに果敢にそれに挑んでいった。

 一方、ちょっと屋根の高さが低い小さ目の家で鍋を抱えて途方に暮れていたノアノア王子は悪寒を感じて身震いする。
「疲れてしまったのかもしれない。今日はいろいろ多忙だったし……」
 泳がせていた視線の先に魅惑的なそれがノアノア王子を呼んでいるようだった。
「少し、そこのベットで休んでから今後のことは考えよう。疲れた頭で考えてもいい考えは浮かばないし」
 ノアノアは自分に言い聞かせるようにそう呟くとベットに向かった。
「あれ、このベット、どうして、間が開いてるのだろう?」
 そういうと七つ並んだベットをどっこいしょと言いながら、隙間をなくして、一つのベットにした。
 そして、横になると瞬く間にノアノアは寝入ってしまった。


「誰でしょう?」
 小人のフールは自分たちのベットをすべて占拠して幸せに眠っている見知らぬ少女を見下ろして言った。
「あーっ!」
「どうした、テッド?」
「ゆ、ゆ、夕食のシチューがない?!」
 テッドは空の鍋を仲間たちに見せる。
 それを見て小人立ちはパニックになった。いっせいにドタドタバタバタと大騒ぎになり収拾がきかない。なにせ、五人がいっせいに喋り出したのだからたまらない。小人の声は大きさ以上にとてもうるさいのだ。背の低い小さ目な家はやかましさに満ちる。
 ミランダ王妃の大音響の寝言に毎晩悩まされて、馴れてしまったノアノア王子でさえもさすがに目を醒ます。
「五月蝿いな……」
 小人たちの声がぴたりと止む。
 ノアノア王子は起き上がりながら、?を盛んに飛ばしている。
「だれ?」
「それはこっちの台詞だ!! お前こそ誰だ!?」
「えっ?!」
 ノアノアは周囲を見回して、考えこむ。寝る前の記憶を辿る。
「お前か、オレたちの夕食のシチューを食べたのは?!」
 小人たちは怒っているようだ。不味いと、ノアノア王子は思った。小人たちは守銭奴だという噂を耳にしていたからだ。でも、ノアノア王子にはあいにくたいした持ち合わせがない。これも、ミランダ王妃の大喰感のせいだ。一国の王子がもしかしたら、民たちより貧しい可能性があるのだ。
 耳元に顆粒人ドラムの声が聞こえたような気がした。危ない時はこう仰って、泣き真似をすれば大半の者は同情して許してくれるはずです。小人に通じるかどうかわからなかったが、ノアノア王子は試してみることにした。
「ま、継母にお家を追い出されたの……シクシク」
 小人たちは泣き出した赤い洋服の少女に吃驚した。
「テッドが悪いんだぞ!」
「なにを言う。お前だって!」とモカが反論する。
「まーまーまー。ここは可愛そうな身の上に免じて許してやろう」とクラリスが言った。
「そうだね」「可愛そうだものね」「そうしよう」「うんうん」
 そうやって、嘘泣き落としでノアノア王子はこの背の低い小さ目な家の一員となったのである。
 ただ一人、最年長でリーダー格のマーリンだけはこっそりと微かに微笑だようだった。小人たちの生活は顆粒の森のおかげで以外と裕福な方である。だが、それは同時に単調でそして退屈さも持ち合せていたのである。





「えーと、“目標を確実に捕らえて大人しくさせて貴方の元へお届けします”」
 ミランダ王妃の瞳が目的のものを見付けて輝く。
「これだわ。これよ!」
 宝物庫からルンルンスキップを踏みながら、早速、結界のある城の敷地から離れた森へ向ったミランダ王妃である。森の中でそれの説明書を読み読み試し始める。だが、王妃は度胸はいいが思慮が少しばかり足らない。魔法の通販グッズの肝心の注意書きは読んでいない。なにせ、注意書きという物はだいたい、最後にあるからである。
「魔法の縄よ。七人に満たない小人の家のノアノア王子を捕まえて頂戴。アだムかブだラ……」

取り扱いご注意:危険ですので絶対に人間には使用しないでください!





 危機一髪だった。もし、顆粒人ドラムがちょうど来てくれなかったら、本当にヤバかった。ぞっとしながらノアノア王子は縄の残骸に目をやった。

 その日、ノアノア王子は小人たちと約束した仕事、家事が一段落して、毎日のお楽しみの昼寝をしようと七人に満たない小人のベットにゴロリとなっていた。家事労働で疲れた手足を伸ばし、気持ちよい気分で窓の外を見ると、そこへ突如として縄が現れたのだ。そして、みるみるノアノア王子をぐるぐる巻きにした。思わずもがくノアノア王子であるが、油断していたおかげと気が動転していたせいもあり、ままならない。もがけばもがくほどに縄は食いこみ、ノアノア王子が気を失いかける寸前、ちょうど通りかかった顆粒人ドラムが助けてくれたのである。
「これって、継母王妃の仕業かな……」
「まさか、この魔法の縄は人間には使用しないようにと注意書きがあったはずですから、違いますよ」
「じゃ、やっぱり、そうだよ!」
 確信を持ってノアノア王子は言葉を続ける。
「あの継母王妃がそんな注意書きを読むはずがない。いつだって、よーっく考えてくださいよ!と言わなければいけない人なのだから」
 顆粒人ドラムは今度は同意するように頷いた。たしかに王妃にはそういうところがあると思い当ったからである。
「これからどうします。帰りますか?」
 ノアノア王子は首を振り、じーっと縄をみて思案するのだった。
「いいですか。わたしが顆粒人の顆粒斧を持たなければ、魔法の縄で今頃は……」
「わかっているよ。でも、嫌なものは嫌なの。継母王妃は王様がいないのをいい事に愛人を連れこんでるのだもの」
 顆粒人は考える。愛人とはあのゴシップ鏡の本日の酒乱城内情報
にある紫の流れるようなドレープ仕様の衣服に身を包んだ噂の美青年のことだろうかと。

 その後、いく度か危険な魔法グッズがノアノア王子を襲うが、すんでの所でいつも顆粒人ドラムが現れて擦り傷、切り傷、打撲ですむ。どうして、こうもタイミングよく彼が現れるのか疑問が湧くノアノア王子であるが、今はそんなことを詮索している場合ではなかった。何故ならば、日増しにエスカレートしてきて、本当に切羽詰ってきているのである。
「本当にタチが悪いよね。捕まえるつもりなのだろうけど、こっちは命を落としそうだもの……」
 馴れない生活や人間関係もあって、幾分、疲れてきたのだろう、ノアノア王子が沈んだ感じで呟いだ。
「今度は一つ演出をしてみましょうか?」
「演出?」
「王子が亡くなったことにするのです」
「っえ、ええーっ!!」
「情報によりますとミランダ王妃は今度は毒林檎を魔法宅配便で届けさせるそうです。それをですね。食べたフリをして、命を落とした演技をするのです。私と七人に満たない小人たちは貴方をガラスの棺に入れてお葬式をします」
「それで、継母王妃が騙されると思う? それにしても、その情報は何処で仕入れたの?」
「顆粒人ギルドの秘密網情報です。やってみませんか? それとも、王子にはなにか他の案がおありですか?」
「な、ないけど……」
 しぶしぶ顆粒人ドラムの提案を受け入れるノアノア王子である。


 次の日、顆粒人ドラムの言ったように魔法宅配便が林檎を一つ届けてきた。普通、林檎は一個ばかりを送ったりしないよな、とノアノア王子は呆れつつ、七人に満たない小人たちが帰ってくる直前を見計らって、用意してあった林檎と摩り替えた林檎を齧った。そして、倒れる。そこへ、七人に満たない小人たちと顆粒人ドラムが帰宅し大騒ぎとなる。
 翌日、ガラスの棺に入れられ、お葬式となった。

 それを知ったミランダ王妃は真っ青になって、火の魔物国の王子ギルに伴われて現れた。
「ど、どうして、どうして、こんな事になったの?!」
「王妃様、ノアノア王子が……」
 半狂乱になる王妃の矛先はギルへと向う。
「何とかしなさい、ギル!」
「何とかって、なんだ」
 ミランダ王妃は指輪をちらつかせて言う。
「王子の目を醒まさせなさい、ギル」
「どうやって」
 そこへ尽かさず顆粒人ドラムは耳打ちする。
「こういう場合は接吻すると目覚めるとかどうとかいいますが……」
「そ、それよ、ギル。接吻してノアノア王子を死の淵から目覚めさせるのよ!」
 火の魔物国王子ギルは言われた通りにガラスの棺の蓋を外し、ノアノア王子に迫る。魔物に貞操も恋愛関係もない。なので、接吻自体の意味もわからない。だが……

 ノアノア王子にはガラスの棺のおかげで、その間の会話は届いていなかった。ただ、ガラスの棺の蓋を外したのはわかった。そして、変な気配に目を薄っすら開けてみると―――
「?! うわぁぁぁーーー!」
 あらん限りの力で眼前に迫るギルを押し退けようとする。だが、魔物のギルはびくりともしない。ただ、ノアノア王子の眼前で寸止めしたままである。
「目を醒ましたぞ」
 ぼつりと呟く。
「退きなさい。そこを退きなさい、ギル」
 一難さってまた、一難である。ギルが退くと、ノアノア王子の前には継母王妃が立っていた。
「ああ、よかったわ。ノアノア王子。一緒にお城に帰りましょうね」
「わ、わたしは……」
 その時ノアノア王子の目にそれが入った。
「ドラム……」
 顆粒人ドラムは顆粒斧の変わりにカメラをその手に持っていた。ニッコリと笑って。

 ドラムの奴、最初からなんだか怪しいとは思ってたけど、あんまりだー!! 城では仲良くしてたのに……

「ギル、あたしとノアノア王子を酒乱城へ――」
 ノアノア王子はドラムに問い質す間もなく酒乱城の広間にいた。





     +++++本日の酒乱城内情報+++++

 ノアノア王子の『赤頭巾ちゃん』写真集好評な売れ行き!!
   ミランダ王妃はことのほかご機嫌である。
   企画は有限会社:七人に満たない小人
   カメラマン:顆粒人ドラム

 ノアノア王子とミランダ王妃とそのお相手は三角関係か?!
   写真集は果してフィクションか?! 真実か?!
   今後の三人の展開をこうご期待!

             〜ゴシップ鏡〜





 こうして、ノアノア王子の深い深い溜息の中
 酒乱城の平和な日々はまだまだ続くのだった――

  めでたし♪ めでたし♪ めでたし?!





キリバンというものを初めて頂きました〜♪感謝感激です。
円舞曲様のページではもっと可愛らしくアップされていますよ〜、
ちなみに、ノアノアを白雪王子に頼んだのは私です。ええ、ショタですともーー!!